ぶっ通しで走るのはさすがにキツイので、ところどころで休憩をとる。
その度に、水無月さんは持ってきていたお菓子をモグモグと食べていて、500円分のお菓子はすぐになくなるんじゃないかと、少し心配になる。
なくなったら嘆きそうだもんなあ。なんて。
「小野くん、飴食べる?」
「え、俺も食べていいんすか」
「そうだよ?っていうかね、この飴は小野くんのために買ってきた飴だよ?塩分!」
言いながら差し出された飴は、塩分を吸収するためのものだった。塩飴。
まさか水無月さんが、俺のために飴を買ってきてくれているとは。
予想外過ぎて、恐る恐るという風に飴を受け取ると、水無月さんは楽しそうに笑い。
「それ食べて、水無月さんを海まで運んでくださいな〜」
歌うようにそう言った水無月さんに、俺は飴を舐めながら、「がんばります」と苦笑した。
木々の影がサワサワと揺れる。
心地の良い風が吹く中で、水無月さんは髪の毛を躍らせながら、俺を見つめて「へへへっ」と、はにかんだ。


