ちなみに俺の持っている自転車は、カゴもついているし荷台もある、いわゆるママチャリ的な普通の自転車だ。
そういえば、俺の自転車に荷台がなかったら、水無月さんは一体どうやって海に行くつもりだったんだろう。
いや、そもそも俺が自転車を持っていること前提で話していただろうし、持ってないとかそういうことをまったく考えてなかったに違いない。
ホント、いい加減だ。
今に始まったことじゃないけど。
「小野くん、まだ?まだ?」
そわそわと落ち着きなく、自転車と俺を交互に見やる水無月さん。
俺が「ちょっと待ってください」と言うと、水無月さんは「はーやーくー!」なんて、駄々をこね始める。
しまいには「海が逃げたら、小野くんのせいだからねー!」とか、口を尖らせて言い始める。
ホントこの人は…乗せてもらう分際で……。
なんて言っても、この人には通用しないので、俺は「はいはい」とだけ返事して、鞄をカゴに入れ、自転車にまたがった。
後ろを向いて、
「お待たせしました。どうぞ」
と言えば、
「わーい!小野くんと2人乗りー!」
なんて言いながら、荷台に飛び乗った水無月さんは、嬉しそうに笑った。


