3日分の洗濯物を取り込んでいると、隣のベランダの戸がカラカラと開く音がした。

俺はベランダから、部屋の中に置いてある時計を確認する。

午後3時ちょっと前だった。


「小野くん、おはよ~」


衝立を隔てた向こう側から、いまだ眠そうな水無月さんの声が聞こえてきた。

水無月さんが戸を開けた瞬間に俺は全動作を最小限に抑えていたつもりだったけど、水無月さんはここに俺が居ることに気づいていたらしい。

っていうかたぶん、この時間帯にだいたい俺が洗濯物を取り込んでいることを知っているからだと思う。


「……おはようございます。っていう時間でもないっすけどね」

「え~?今何時?」

「3時です」

「なんだ~、まだ3時なの?」


もっと寝てればよかった~。と、水無月さん。

彼女は休日、放っておくとだいたい寝て過ごしている。

この間なんかいきなり電話がかかってきたと思ったら、『小野くんおなかすいたよー。何か食べ物~』なんていう呼び出しだった。

『この間パン買ってきたはずですけど…』と俺が返したら、『うーん…ベッドがあたしを離してくれないー』とかなんとか言い始めて、結局俺が出向く羽目になった。

で、食糧を持って訪ねてみれば、ベッドの中ですやすや寝てたし。

さっきまで通話してたのにね。おやすみ3秒ですか。知ってます。


おなかを空かせるか睡魔に負けるか、どっちかにしてほしい。