水無月さんの寝顔は、悪夢なんてまったく見てません、とでも言うような、それはもう穏やかなもので。
「…………。」
無性に腹が立ったので、その寝顔にかかっていた水無月さんの長い髪の毛を、ピンッと人差し指で弾いた。
そしたらそれがちょうど、水無月さんの鼻先にかかった。
すると水無月さんは少しだけ身じろいで。
「……むにゃ」
「…………。」
むにゃ、じゃないし。
俺は小さくため息をついた。
どうしてわざわざ水無月さんが俺を呼びつけるのかって、それは水無月さんにしかわからないし。
たぶん水無月さんから答えを聞いても、「小野くんだからだよー」とか、ホント感覚のみの意味わかんない答えが返ってくるんだろうし。
「…………。」
そういえば、昨日、水無月さんが一緒に映画見ようって誘ってきたとき、
『これね、面白いらしいの!だからね、小野くんと一緒に見たいのさー』
って、言ってたなあと。
今になって、ぼんやりと思い出した。
それだけだけど。
「…………。」
で、このホラー映画、どうやって消そうか。