「…………。」


気力を奪うって言うか、怒りたい感情を消し去ってしまうと言うか。

まあいいかと、そんな気持ちになってくる。

もしかしたら、俺だけかもしれないけど。




――…ずり。


ぼんやりそんなことを考えていたら、肩に乗っていた水無月さんの頭がずり落ちる。


「…………。」


しょうがないので、左手で水無月さんの頭を支えながら、抱えていた膝を解き、あぐらをかく。

それから水無月さんの頭を、太腿辺りにそっと載せた。

すると水無月さんは、それでようやく落ち着いたのか、すうすうと寝息を立て始めた。


「……はあー…」


まったく。

一体なんのためにここに来て、なんのために苦手なホラー映画を見て、なんのために膝枕とかしてんだろう。俺。

本当にわからない。まったくもってわからない。


そもそも、どうしていつも水無月さんは、俺を呼びつけるんだろうか。

友達が居ないわけじゃないだろうし。だいぶ前に「友達と旅行行くんだー」って旅行とか行ってたし。

映画を見るのとか、別に俺じゃなくてもいいと思う。


「…………。」


無意識に水無月さんを見下ろす。