となりの水無月さん。





よしよしー。じゃないっすよ。

とか、心の中だけで反抗してみる。

してみるっていうか、それしかできなかった。


正直に言うと、どう反応したらいいかわからなかっただけで。

誰かに頭を撫でてもらうって言うことが、この年になるまで、片手で数えられるほどしか、なかったような気がする。

だから、どうしたらいいかわからなかった。


俺はなんにも言えないまま、水無月さんによしよしされる。

髪の毛が絡まるんじゃないかってくらい、わしゃわしゃされているような。別にいいけど。

そうしてずっと黙っていたら、不意に水無月さんが、後ろから俺の顔を覗き込んできた。

視線を合わせる。


「……なんでしょうか」

「んー?いやー、小野くんじーってしてるから、寝ちゃったのかと思って~」


水無月さんじゃあるまいし。


「小野くん」


言い返そうかどうしようか悩んでいると、水無月さんが俺を呼んだ。

どことなく、優しい声色だった。

だからだろうか、振り向けなかった。

振り向いて、水無月さんが浮かべているであろう微笑みを見たら、思わず泣きそうだな、とか、思ったからかもしれない。