「小野くんも」水無月さんは、ポテチを袋から一枚、取り出しながら言う。「小野くんも早く就職すればいいのに……」
“就職”の二文字を聞いた途端に、気分が急降下するのは、たぶん俺だけじゃないと思う。
「……水無月さん」
「む?」
「就職の話はしないでもらえますか……」
「え、なんで?」
真顔で聞いてきたよこの人。
「……察していただきたいです」
「ふーん?」
あ、察する気とかさらさらない返事だこれ。
「小野くんはー」水無月さんは察する素振りなんてまったく見せずに、続ける。「あたしと同じ会社に入ったらいいよー」
缶の飲み口をカチリと噛んで、水無月さんは、にへらーと笑った。
笑い事じゃない。
「絶対に嫌です」
「なんでさー!」
だって水無月さんが上司とかホント耐えられない。いろんな意味で。


