言わずもがな。
水無月さんの素性と言うのは、これである。
片付けはしない、手の届く範囲に必要なものがないとイヤな性格。
立ち上がって何かを取りに行くのがめんどくさい、家に帰ったら即部屋着。
休日は家でゴロゴロ、酷い時には丸一日寝て終わることもある。
そして長いこと、恋愛の“れ”の字とも無縁だという。
水無月さん曰く、『めんどくさいもん』ということらしい。
普段はメイクも完璧でオシャレなスーツを着こなしオフィス街を颯爽と歩いているようなこの美人が、まさか家ではこんな生活送っている、なんて誰も思わないだろう。
もちろん、俺もこの素性を知るまでは思ってもみなかった。
っていうかむしろ、知らないままで居たかった。
街を歩いて居れば10人中9人は振り向くだろうこの水無月さんなのだ、知らないまま夢を見ていたかった気持ちの方が圧倒的に強いのは当然だろうと思う。
……まあ、その素性を知ってから、かれこれ1年とちょっとだ。いい加減慣れた。
「……でね?その同僚のね?西村がね?」
そしてこの愚痴にも慣れた自分が居る。
愚痴の内容に出てくる会社の人々とはもちろん顔を合わせたことがないので、一体どんな外見の人なのかさっぱりわからない。
それでも頻繁に名前を聞く“西村”という人は、愚痴を聞いている間に覚えてしまった。
ちなみに上司は内容でも“上司”としか言わないので名前を知らない。


