「……なんでしょうか」
「ビール……」
「はい」
「買いに行こう」
「わかりまし……はい?」
流れでうなずきかけて、思いとどまる。
今、水無月さんはなんて言った。
“買いに行こう”って言った?
天変地異の前触れだろうか。
「……え、水無月さんも行くんですか?」
「うん、行くよ」
うなずきながら水無月さんは、ようやく冷蔵庫を閉めて立ち上がる。
それから伸びをして、脱力する。
スーツにちょっとしわが寄っていた。
「なんかねー」水無月さんはぼんやりと冷蔵庫を見る。「今日は、そーゆー気分なのね」
そーゆー気分。どーゆー気分。
「小野くんとね?」水無月さんが俺を見上げる。「のーんびり歩きながら、お酒を飲みたい気分なのさー」
……どーゆー気分なんだろう。それは。