「小野くーん……」


金曜日の夜、日常の一部と化してしまった連続ピンポンにドアを開けると、水無月さんが眉の形を八の字にして立っていた。

心なしか、全体的な立ち姿もどんよりしているような。


「……なんかあったんすか?」


ドアを開けた状態のまま、聞かない方がいいだろうなあと思いつつも、気がつけば口をついて出ていた質問。

そんな自分にため息が出た。内心。

水無月さんはどんよりした雰囲気のまま、「うえ~」と。


「聞いてよ~小野くん~」

「はい」

「明日も仕事になったよ~」


水無月さんは眉も口も下げてしまった表情で、そうぼやいた。

明日。何かあったっけ。

右斜め上を見つめながら思い出そうとする俺に、水無月さんは心底憎らしそうな声色で。


「くそー!しょせん大学生には無関係すぎてピンと来ないってかあ!ちくしょー!」

「え、なんすかそれ」

「休日出勤ですよ休日出勤!お休み返上ですよー!」


あーそっか、とようやく思い出した。明日は土曜日だ。世間一般では休日だった。

大学生は更に休みが多いので、曜日の感覚があんまりないというか。なんというか。

そんなこと言うと、また水無月さんに怒られるので、言わないけど。