「そうだったっけ?じゃないですよホント……」
「いいんだよこれでー。あたしはこう、自分の居る場所から手が届く範囲に必要なものがあってほしい人なのー」
「そのせいでこの間『大事な書類なくしちゃったよ小野くん一緒に探して~』って泣きついてきたの誰っすか!」
「ハ~イ水無月さんで~す」
「自覚してるならちょっとは反省してくださいよ!誰がその書類見つけたと思ってんすか俺ですよ!?同時にゴミ捨てて片付けしたのも俺ですよ!?」
「うんうん、小野くんにはとっても感謝してるよ?おかげであたしは上司に怒られずに済みました、ありがと~。ようし、飲もう!」
絶対反省してないこの人。
もうこの人の頭の中にはビール飲むこととゴロゴロしながら人に愚痴聴いてもらうことしかないよ絶対。
ジャージに着替え、前髪を上にまとめて縛るという完璧くつろぎ体勢に入った水無月さんは、定位置であるテーブルのそばの空いたスペースにあぐらをかいて座る。
ちなみにジャージは高校の時のらしい。あずき色だ。
そして自分で立ち上がって冷蔵庫に向かわないところを見ると、今日も今日とて俺がこき使われる運命にあるらしい。
わかってたけどね、うん。
「小野くん、ビールとおつまみ!」
「はいはい……」
ニッコリ笑顔の水無月さんには、絶対に勝てないことも、わかってたけどね。