となりの水無月さん。





今日だって、何度も言って聞かせたっていうのに、傘、忘れてるような人だし。

っていうか、言って聞かせた、とか年下に言われる大人ってどうなんですか。水無月さん。

大問題だと思いますよ。俺は。

……なんて、水無月さんに言っても、だいたい気にしないんだ。この隣人さん。

今だってほら、


「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ、らーんらーんらーん」


だとかなんだとか。

心底楽しそうに歌いながら、水たまりを飛び越えているわけだし。


だからね、水無月さん。

傘から出てますから。かなり。

あーもう、髪の毛とかすでに水含んじゃってるし。

それ誰が拭くと思ってるんすか。俺っすよ。俺。


まったくこの人は……。

と、心の中でまたも、ため息。

散々悩んだ挙句、迎えにきたっていうのに、それも無駄だったんじゃないかと思うくらいの、水無月さんの自由っぷり。

なんのために傘持って迎えに来たんだろう。っていうか俺何してんだろう。

っていうのを、割と本気で思ってしまう今日この頃。


「わー!小野くん小野くん!水たまり飛び越えたら水たまりに入っちゃったー!」

「…………。はあー……」


お願いだから雨の日くらい、じっとしててください。水無月さん。