となりの水無月さん。





「おなか空いたのに……小野くんの作ったご飯超食べたいのに……」

「…………」

「小野くんの作ったしょうが焼きとお味噌汁……」

「…………」

「…………」


ぐうう。

と。水無月さんの腹の虫が大きく鳴いたところで、俺は負けた。

もはや負ける以外の道が見えなかった。くそう。


「……わかりましたよ…」俺はため息混じりに言う。「作りますから」


途端に水無月さんの表情が変わる。

それはもう、キラキラと。例えるなら、大きなクワガタ見つけた時の小学生みたいなキラキラ感。

雨が降っていることすら、忘れるような眩しさだ。

わかりづらいけど、とにかくそんな輝きだった。


「ホント!?」

「はい」

「わーい、やったあー!」


水無月さんが両手を上げて喜んだので、傘に思いっきり当たった。

その傘がついでに俺にも当たった。地味に痛いっす。

喜ぶならもうちょっとこう、落ち着いた喜び方をしてほしい。というか、ここが傘の中だということを思い出してほしい。

忘れてるでしょ。水無月さん。