となりの水無月さん。






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土砂降りでもないけど小雨でもない雨の中。

傘をさして水無月さんの勤め先まで向かうと、出入り口の前で待っていた水無月さんが、すぐに気づいて手を振ってきた。


「おーい!小野くーん!」


周りの通行人が、水無月さんの呼び声にこちらをチラリと見て行く。

目立ちたくはない性分に急かされて、俺は足速に水無月さんの傍へと歩み寄った。

すると水無月さんは、今までいた屋根の下からするりと出て来て、俺のさしている傘の中に躊躇なくお邪魔する。

慣れたものである。


「ふい~。お迎えご苦労さま~」

「いいえ全然」いつものことですから。


水無月さんは自分のスーツに乗った雨粒を払う。

俺はその様子を横目に、水無月さんの勤める会社のビルを傘越しに見上げた。

今更だけど、俺は水無月さんがどんな仕事をしているのか、あんまり知らない。

まあ知ったところで、アレだけど。


「そういえば小野くん、お迎え早かったね?」


なんとなく不吉なセリフに思えてきますよそれ。水無月さん。

という思いは飲み込み、その質問に答える。