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大学進学のために、慣れない土地で独り暮らしを始めたのが約2年前。

まだまだ知らないことばかりだったこの地で、最初に出会ったのが隣に住んでいたこの女性。

名前を水無月美子(みなづきみこ)という。

初対面の時は水無月さんの美人っぷりにテンションが上がっていたけれど、しかしまあ、この人の素性を知ってしまってからはそれも降下の一途を辿っている。

どうやって素性を知ったかっていうのは、もうホントひょんなことからなので説明を省く。とにかく自分の運の悪さを恨んだ記憶がある。

それからはもう、水無月さんも素性を隠す気がなくなったのか、飲み仲間かまたは愚痴を聞いて欲しい時、もしくはヒマな時……まあ簡単に言ってだいたい毎日のように夜、仕事から帰ってくるとたいてい自分の部屋よりまず俺の部屋へとやってくるようになった。


で。

今日も今日とて、隣の部屋へと強制的にお邪魔する羽目になった俺は、


「…………」


二日ぶりに見た水無月さんの部屋に、本日三度目となるため息を吐きだした。


「……水無月さん」と、俺は自分の横を鼻歌混じりに通り過ぎていく水無月さんに言う。「この間片付けたばっかですよね、この部屋」

「あれ?そうだったっけ?」と、水無月さん。


俺が居ると言うのになんのお構いもなしに着替えはじめるこの人の性格にもそろそろ慣れてきた自分がいる。

(と言っても、女子特有の服を脱がずに器用に着替えて行く手法なのでなんというか複雑である)


とぼけているのか本音なのか、たぶんこの人の場合後者だろうけど、それでも俺はその場に崩れ落ちんとせんばかりに項垂れた。