汗が流れ落ちるのを気にもしないで、あたしはただひたすら走った。



他の人と楽しそうに話すのを聞いていられるほど、あたしは大人じゃない。



楽しそうに話なんかしないでよ。


リュウのバカ!



「はぁはぁ……っ、く、苦し……」



真夏の全力疾走は思ったよりも長く続かなかった。



眩しいくらいの太陽の熱にやられたあたしは汗だくでヘトヘト。



運動不足の体にはかなりキツい。



それもこれも、全部リュウのせいなんだからね。



あたしがいる前で、電話になんて出ないでよ。



肩で息をしながら後ろを振り返ったけど、そこには誰もいなかった。



追いかけて来てもくれないなんて。


もしかしたら、電話に夢中であたしがいないことにも気付いてないのかも。