「俺と話すのがそんなに面倒かよ?」
後ろから聞こえた声に振り返れば、リュウは立ち止まったまま動こうとしていなかった。
眩しくないように手で顔を覆い、眉をしかめる。
「面倒なんて言ってないじゃん。暑いからさ、とりあえず向こう行かない?」
そう言ってちらりと公園に目をやると、同じようにリュウもそこに視線をやった。
だけど、不機嫌な顔をそのままに動こうとしない。
言いたいことがありそうな、そんな顔をしてる。
「お前はさ……俺が他の女と話しててもなんとも思わねぇの?」
リュウがあたしのことをお前って言う時は、そのほとんどが怒っている時。
怒ってるというよりも、不機嫌な時って言った方が合ってる。
リュウは今まで、本気であたしに怒ったことがない。
大きな喧嘩だってしたことなかった。



