春...出会いの季節。
桜がひらり、ひらりと舞い落ちる。
4月5日、中学入学式。
桜は満開、空はとても青く澄んでいる。
時折、風が強く吹き、ひらり、ひらりと桜が舞い落ちる。
一人一人、クラス名簿が配られる。
私は列に並び、その紙ををもらうと、強く風が吹いてきた。
その風の勢いで、桜の花びらが舞い落ちる。
風がおさまると、私や、周りの人たちが手で崩れた髪を直したりしていた。
クラス名簿を見ると、私のクラスは・・・まぁ、わかりやすく1組だった。
ふと、クラス名簿の紙の上にさっきの風で舞い落ちたらしき桜の花びらがあった。
私はその花びらを手に取り、何か、衝動にでも駆られたかのようにその花びらをとった手を握り締め
「・・・よし!」
と、気合をいれた。
宇佐美 茜(うさみ あかね)、12歳。今日から中学生になる。
この学校・・・緑原中学は、一学年7クラスある。
ちなみに、私の通っていた小学校は一学年2、3クラスほどしかなく、全校も400人、いるかいないかくらいだった。
私が小学校で中学校を見学に来たとき、すごく迷って、集合場所がわからなくなるほど広かったことを覚えている。
私は小学校のとき、家庭の事情で、何回か転校をしていた。
けど、どこに行ってもお決まりのように“いじめ”はあった。
私は親のことや、いろいろなことがあったので、よくいじめられていた。
転校は3回したのだが、2回目は宮城県のほうにいき、神奈川からきた私は、「都会のやつがいなかにきて見えはりにきたんだろ」などといちゃもんをつけられいじめられ、3回目・・・最終的にとどまった小学校では、宮城から帰ってくるかのように神奈川にもどってきた。
なるべく大人しいキャラを演じていたのだが、それゆえ、抵抗しないのでまたいじめれ、それにぶちぎれるようにして私ははっちゃけたなんでも素直に言う・・・つまり、素の自分に戻り、回りに接した。そこでまた問題が出た。なんでもはっきりといってしまうので失言が多く、周りからとても嫌われてしまった。
親は仕事が忙しいので、それでストレスをかかえているのに、私がこんな目にあってるなんて言ったら、よけいにイライラさせてしまうだけだから・・・心配されないように、何も言わなかったのである。
なので、周りからはいじめられてばっかりだった。たまに傷をつけて帰ってきても「おにごっこしてはでに転んだ」とでも言えば親は信じてくれた。
けど、そんな私でも好きな人はいた。
同じクラスで、私をいじめてきたりしなかった、優しくて・・・私の、大好き“だった”人。クラスの女子とかでも、いじめてくるのは一部だったので、それなりに一緒に居る子はいた。その子がその好きだった人と幼馴染だったから、
協力してもらって、ついに、告白した。
けど、それが直接だったので、それを聞いていたほかの口が軽い女子が回りに言いふらしたのである。人数が少ない学校だったので、みるみるうちに広まっていき、すごくきまずい雰囲気になってしまった、最悪の小学校生活だったのである。
ちなみに返事は・・・・・「ごめん。」
まあ、当然のようにふられたわけで、私は中学では幸せな日々を送りたいと考えている。
無理かもしれないけど。
けど、あきらめたらなんちゃらかんちゃらっていうのだってあるから、できる限りのことをしたいと思う。
私は教室に行こうと思った。が、場所がわかるわけもなかった。すると
「...に、並んでくださーい。1組はこっちに並んでくださーい。」
と先輩らしき人が“1”というプレートを持って、誘導していた。
その先輩の前には、私以外の1組らしき人たちが並んでいた。私も並ぼうと思ったときに、風でクラス名簿が飛んでしまった。
「わ、わ!ちょっ・・・まっ・・・」
あわてる私の目の前に、一人の女の子がきて
「これ・・・あなたのですか?」
と、クラス名簿を持って、私に差し出して尋ねてきた。
「あっ・・・はい!あ、ありがとうございます。」
どうやら、その女の子は校章の色を見る限り同い年みたいだ。
髪は耳よりしたのツインテールで、前髪をふたつにわけた大人しそうな可愛い子だった。
「敬語じゃなくて大丈夫だよ。もしかして・・・1組?」
女の子は優しく笑って聞いてきた。
「あっ、うん!1組だよ。」
「よかったぁ、あたしも1組なんだ!あたしは森山 詩織(もりやま しおり)って言うん だ。しおりって呼んでね!」
「う、うん!」
はじめてできた友達。とっても緊張する。
「私は宇佐美 茜って言うんだ。」
「うさみ・・・うさぎみたいでかわいいね。あかねちゃん、だね!よろしく!」
はじめて・・・じゃ、ないけどかわいいといわれて少し頬が赤くなった。
しおりちゃんとは、教室に行くまでけっこう時間があったので(しかも一番上の4階)、それまでどこの小学校か、とか部活は何に入るか、などの話をしていた。
私としおりちゃん以外にも無論1組の人はいたのだが、同じ小学校の人や、知り合いの人は一人もいなかったので、しおりちゃんとずっと話していた。
教室前まで来ると、誘導してくれた先輩は
「ここが1年1組です。素敵な1年をすごしてね!」
と言い、去っていった。