ふくらはぎの女(ひと)【完】


「まだ冷えてるよ、

あんたの体」

ラーメン屋を出て

再びてろてろと

歩いている途中、

ふいに邦男が

そう言いながら

私の二の腕をつかんだ。

その手のひらの熱さで

私は自分の体の

冷え具合を知る。

「ほんとだ。

ご飯食べたら、

だいぶあったまったと

思ったんだけど」

答えながら私は、

(ここにいると

思い込んでたから。

からっぽになった

気がしてるから、

すかすかするんだ)

と気づいていた。