「お待たせ」

「わ、びっくりした!」

小声のやりとり。

振り向いた邦男が

手にしていたのは

『赤ちゃんの

名付け辞典』

だった。

ちくん、と

胸が痛んだ。


「お帰り。・・・どうだった?」
 
一呼吸置いて、

私は答えた。

「いなかった」

「えっ?」
 
「赤ちゃん、

いなかったよ。

私の勘違い。

妊娠してなかったみたい」

「・・・・・・そうなんだ」

「うん」

「そっか」