「昨日、うち来た?」

ベランダから入ってきた晴矢はいつもと変わらない笑顔をしていた。

「え?」

「昨日だよ。昨日。」

彼はわたしのベッドに深く腰かけた。

「え、あ…うん。行ったよ。」

「千夏がメシ作ってくれたんだろ?ありがとな。」

「あ、うん。平気だよ。」

普通に話してることが不思議。

晴矢、昨日わたしにキスをしたんだよ?

あ…、晴矢にとって、キスって深い意味は、ないのかな。

そう思うと、悲しくなってきた。

「千夏?」

その優しい声で呼ばれることが、苦しくて仕方ない。