彼がわたしの部屋へ来た。

「は、る…」

思わず声がつまってしまう。

昨日の、今日。

晴矢はきっと夢のなかで美沙にキスをした。

思い人にキスをした。

恋人がキスをするのは自然なことで、彼にとってなんの戸惑いもないはず。

でも、わたしは違う。

思い人にキスをされた。

ずっとずっと好きだった、晴矢にキスをされた。

わたしを美沙と、間違えて…。

「千夏。」

そう呼ばれることさえ苦しかった。