「ただ好きなだけなのにな…。」

「え?」

「ただ好きなだけなのに、なんでこんなに悩まなきゃいけねーんだろうな。」

彼の瞳は切なすぎた。

静かに落とされたその言葉。

わたしは何も言えなかった。

わたしも一緒だから。

晴矢がただ好きなだけなのに、たくさん悩んだ。

好きなのに伝えられなくて、
美沙と付き合いだして勝手に落ち込んで、
二人の問題に関わって。

好きは、怖い。

今のわたしなら、晴矢への同情だけで美沙のことを突き放してしまいそうだった。