あたしが愛した人

店から数十メートル走ると、細い路地があった。
暗い、人通りの少ない路地。

そこに俯いて座っている人が見えた。
赤い髪の、見覚えのある服装。






渡邊蒼だ。


そう分かったと同時に私は駆け寄った。







「ちょっと…大丈夫?!」


動かない。
返事もない。



私は肩を軽く揺すった。

「ねぇ、ちょっと…。大丈夫なの?!」




ゲホッと咳をして、肩に置いた私の手に触れた。