「美月、ちょっといいかしら?」
私のもとへ悠々と歩いてきた茜さん。
「はい。」
そのまま、スタジオの外を促される。
翔は最後までカメラマンさんの隣で撮影を見守ってくれていた。
その翔にコクリとうなづいて茜さんの後を小走りでついていく。
そして、ロビーの椅子に腰かけた茜さんの隣に歩いて行った。
「前も、こんなことがあったかしら。」
前、と言うのは6年前のことだろう。
あの時、私はまだモデルになりたてで、撮影の時間を30分ほど過ぎてしまっていた。
それで、怒られて・・・
そのまま、何もせずに出て行ったんだっけな。
「はい、あの時はすいません。」
あの時は、スタッフさんたちが探しに来てくれて、1時間遅れの撮影が始まったんだ。