「俺、翔だけど」




「えっ...しょ、国枝君?」




危ない危ない、また翔って呼ぶところだったじゃないか。



でもなんで翔から電話?



電話番号を交換してメールアドレスもお互い登録して、でもそれ以来翔から電話が来たことは一回もなかった。



胸の鼓動が早くなって、妙に部屋にある時計の針の音が胸に響く。




「やめろよ、翔でいい。そう前にも言ったろ?」




前っていうのは翔の奢りで春さんと3人でケーキ屋に行ったとき...


まだ、私に恋愛感情のものの一つもなかったとき...



「だって、音々がいるのに名前で呼んだら図々しいかなって思った」



「そんなことかよ。気にすんな」



もともと色のある声だけど電話だと少し低めで艶がある。