俺様と闘う私『一部・完』

 「久しぶりですね、渡辺先生。もう担当に?」



 突如、存在が薄れていた志貴に向かって、年配刑事の方が話しかけた。



 ―――知り合い?



 ふと当然な疑問を感じながら志貴を見つめると



 「いえ。個人的に来ただけです」



 特に感情を込めるでもなく、淡々と返答をした。



 先生って呼ばれてる志貴がなんだか不思議で、その横顔をぼんやりと見つめる。



 頭が空っぽなままの私。



 静寂が一瞬通った後、



 「この度は、お悔やみ申し上げます。ご家族の方には申し訳ないんですけど、ちょっと話を聞かせて頂けますか?」




 儀礼的なお悔やみの言葉と、そしてNOとは言わせない雰囲気で話を聞かせろと言われ、空っぽの頭がなんとなく起動した。



 それでも話ができるかどうかは不安定で。


 どうしたらよいのかと考えることも儘ならない。



 そんな私たち母子を見た志貴は



 「場所、変えましょう。……理香」



 刑事さんに呼び掛けた後、私の名前を口にして視線を送ってくる。



 その視線をぼんやり受けとると



 「行くぞ」



 と手を差し出された。



 いつもなら決して取らないその手を、私はすがり付くように握りしめ、おばあちゃんの眠る部屋を後にした。