俺様と闘う私『一部・完』

 ふらふらの状態のまま志貴に連れ出され、当り前のように呼びつけられて停まっていたタクシーに押し込められた。


 行き先を言わずとも出発するタクシー。


 なぜタクシーがすでにいるんだろう?



 なんて考えは私の頭には全く浮かばなかった。


 けれど



 「大雅、サンキュ」



 隣に座る志貴がそんな電話をしたので、大雅さんが呼んでくれたらしいタクシーだと理解した。



 震えそうになる手をギュッと握り合わせて、唇を噛みしめていると



 「噛むな、理香」



 噛みしめる私の唇を下方に親指で引っ張って、噛むのを止めさせられた。



 そのまま噛んでいた下唇をキュッと親指の腹が撫でる。


 志貴の親指が口もとに当てられて、そこが熱を帯びた。


 そんな場合じゃないのに、私は赤くなって右に顔を逸らして志貴の指から逃げた。



 そうしたら握りしめる手にそっと右手が伸びてきて包まれた。



 いつもなら振りほどきたくなるハズのそれ。



 なのに、温かさに震えが治まった。


 握りしめすぎた自分の手を緩めると、被さる彼の小指をキュッと自分から握りしめた。