「・・・・帰んなよ。帰さない」




立ち上がったあたしの腕をギュッと掴む。笠井くん?そのまま引っ張られて座らされる。

腕は掴まれたまま。





「もう聞いてしまったから帰さない。彼女とは別れた。最初から無理だった。こんなこと言ったらただの言い訳にしかならないんだけど俺、昔から親父に女は泣かせるなってずっと言われててさ。あいつに告白されたときも泣かせるの嫌だなと思ったから受けたんだけど・・・やっぱり好きじゃないから無理だった」




「・・・・あたしはいっぱい泣いた。笠井くんが彼女と付き合ってからいっぱい泣いたよ。もう涙が枯れ果てるくらい泣いたんだよ」




「ごめんな。俺があのとき好きだって伝えてたら良かったのに。言えなかった俺を許して」




「名前、名前で呼んでほしい。笠井くん好きな子しか名前で呼ばないんでしょ?あたしの名前呼んで」




「・・・好きだから恥ずかしくて呼べないんだよ。だからあえて特別に呼んでたんだよ。でも許してもらえるならいくらでも呼ぶよ。風香」