「冬美の泣き顔を見たのは、

冬美がまだ入社して間もない頃。

・・・

オレがまだ社長になる前の話。

・・・

父に呼び出されて、夜遅く、

会社に行ったオレの目に飛び込んできた。

綺麗な泣き顔・・・

仕事がうまくいかなかったのか、

それとも男に振られたのか、

そんな事は分からない・・・でも、

女の泣き顔を綺麗だと思ったのは、

それが初めてだった。

父の下で働いてる間も、社長に就任してからも、

オレの心に住み着いてるのは、

冬美の泣き顔・・・

忘れられなくて、冬美が恋しくて、

必ず手に入れようと、ずっと思っていた」



「・・・」

…歯の浮くような言葉。

それなのに、

その言葉が、なんだか嬉しくて、

くすぐったくて・・・

私は戸惑ってしまった。