1. 君色-the great blue yonder-

『菜緒、』

菜緒は耳をふさぐ。

聞きたくないよ。

嫌でも何を言うか分かっちゃったから。

そんな菜緒の手を絢姉、無理矢理つかんだよね・・・

『ちゃんと・・・話、聞いて。』

痛いはずなのに、苦しいはずなのに、菜緒の為にしっかりとした声で話してくれた・・・

今でも一言、一言、しっかりと覚えてる。

『目には見えなくなるよ、姉ちゃんはね。でも菜緒が私のコト、覚えてくれている限りは、菜緒の中で生きられるの。辛い立場に立させちゃってごめんね。だから・・・だからこそ、引き摺らない・・・で。ちゃんと前を・・・前だけを向いて。逃げな・・・いで。姉ちゃんの分も・・・姉ちゃんが生きられな・・・かった分も・・・絶・・・対・・・生・・・きて。』

ここで姉ちゃんは深く、深く深呼吸をした。

そして、

『あ・・・りがと・・・ね・・・』

その一言を最後にあの吸込まれそうなくらいな青空に、飛立っていったよ、ね・・・



あの日から菜緒は絶対強くなる、って決めた。

泣かないし、甘えない。

それでいいよね、絢姉?