走る

 走る

  走る



電気が消されて先がみえない廊下を、ただひたすら走った。



翔に強く捕まれている腕が熱い。



その時間はとてつもなく長く、瞬間の様に感じた。



「……っはあ、はあっ」



何処をどれくらい走ったのか、まったくわからない。



息が切れてつらくなってきたくらいの時、唐突に翔は止まった。



窓から景色がよく見えそうな、がらんとした教室に押し込まれる。



「…………翔」


「……っ」



翔は私の頬にのこる涙の跡をみて顔を歪め、袖で乱暴にこすった。



前触れも何もなく、力強く抱きしめられる。



突然の事に、私はただ身を固くした。






――ひゅ、るるるる……



ふいにひとつの明かりが高く登る。



それが藍色の空に紅い華を散らせた瞬間、彼は私の耳元で囁いた。








「――――――好きだ」








さっき止まったはずの涙が溢れ出す。



私は翔の背中に腕を回した。



震えて上手く力が入らない。



「わ、わたしっ……ずっと翔のこと、好きだった……っ」



嗚咽混じりで絞り出した言葉は、ちゃんと翔に届いたらしい。



抱きしめる力が一層強くなった。




『空き教室でふたり、後夜祭で打ち上げられる花火を一緒にみるとむすばれるらしい』



ふっ、と、それが頭をよぎる。



これはカウントに入るのだろうか。



窓の方を向いていても、私は












花火なんて目に入らなかった