【短編】花火




後夜祭、私は空き教室に呼び出されていた。



「返事、きかせてもらってもいい?」



倉田くんの目は真剣そのもの。



どくっ、どくっ



心臓が飛び出たみたいに、やけに大きく私の心音が聞こえる。



私は震える拳をぎゅっとにぎりしめ、からからに乾いた口を開いた。



「……倉田、くん。私、」



「杏奈っ!!」



突然、大きな音を立てて教室の扉が勢い良く開く。



窓を背に、扉の方を向いていた倉田くんが目を見開いた。



足が凍りついたように、その場から動けない。



でも、顔なんかみなくったて声だけでわかってしまう。



ずっと隣で聞いていたい、でも大っ嫌いな愛しいあいつの声。



たががはずれたように目から涙があふれ出す。



足も腕も、ぴくりとも動かない。



そんな私の腕を乱暴に引いて、あいつは……翔は、廊下を駆ける。



動転してうまく働かない耳で、花火打ち上げのカウントダウンを遠くに聞いたきがした。