ジュリア

 

「じゃあ今日からよろしくね」

 そういって彼女は低く結われた甘栗色の髪を揺らした。微笑むと八重歯がちらりと顔を覗かせて、やけに幼く見えた。
 ジュリアさん。雑貨屋ジュリアの店主で、僕の雇い主。
 僕は170センチほどの身長だが、彼女とほぼ目線が変わらない。切れ長の目に、筋の通った鼻。すらりと伸びた手足も、どれもとてもきれいだった。
 僕より3つ上の22歳で、店を始めたのはほんの数ヵ月前。いままで人は雇わず、すべて一人でこなしてきたと言う。
 店名のジュリアというのは彼女の幼い頃からのあだ名らしい。本名はマツモトジュリで、漢字はよくわからない。
 たった3つ上のこんな若い人が自分の店を持っているなんて。感動と焦りを感じた。

 ところで僕はジュリアさんに見覚えがあった。しかし、どんなに記憶をたぐっても思い出せない。他人の空似か何かだろうと、その時はとくに気に止めなかった。