愛は嫌いなんだ



ふと顔を持ち上げる。
目と目が合うと、にこりと笑って右手を差し出す。
思わず目をそらした時、心臓が駆け足になった。
恥ずかしさでそう言った彼の顔を直視することができなくて、
あたしはそのバトンをそっと大きな手のひらに乗っけた。

「後はオレに任せて」

ふわりと風が吹き抜ける。
ぐんぐん遠くなっていく山谷君。
あの優しい目と穏やかな口調。

あたしは山谷君に恋をした。