まあ、おしゃれに命かけてる女子高生からしてみればこんな私を見て、イライラする気持ちも分かるんだけど……。



だからって、いちいち聞こえてくる嫌みが五月蝿いんだよね。


しかも、ムカツク。



「…ただいまぁー」


今日は家に誰もいないみたい。


暗くなった部屋の電気をつけた。



「…はああっ……」


ちょっと、豪快なため息をついてから頭にのせた暑苦しいカツラをとった。

手入れの行き届いた栗色の髪の毛が姿を表す。





今日も1日お疲れさまあー。


自分にそう言い聞かせてテレビのスイッチをいれた。


「綾~。今日の晩飯はー?俺、腹減ったし」


あー、そうだった。

こいつが居たんだったわ。


全く存在すら忘れてた。


「冷蔵庫のもん、あさってテキトーに食ってろ」


「はあー?そりゃ、ねーだろ。まるで、泥棒じゃん」


「無断で人の家に入った時点で泥ボー決定してるから」


「えー、ひでーよ。いいじゃん。お前ん家も親が共働きなんだし、俺料理出来ねーし」


「あー。分かったよ、五月蝿いな。ってか、マジウザい。作ればいーんでしょ。作れば!!」


「よっしゃ♪俺、オムライスがいいー!」


「…後でね」



そう言った私は読みかけの雑誌を開いた。



「へいへい」




こいつ……裕静(ユウセイ)とは、幼馴染みだけど、とにかく女遊びが半端ない。


そして、毎日晩御飯を食べにくる。


裕静の親は、海外に居るから今は一人暮らしなんだよね。



まあ、家も同じようなもんか。


一ヶ月に一回帰ってくればいいところで、ヘタすれば三ヶ月ほど帰って来ないこともある。


ほとんど、一人暮らしのようなもんだよね……。