彼女の愛すべきドビュッシー

「修君、

 最初っから弾ける人なんていないから。

 大丈夫よ。

 ゆっくりいきましょう。」

「はい。」

レッスンが終わって振り向くと、

同じくらいの女の子がいた。

「こんにちは。」

「こんにちは。」

「あ、ありあちゃんは修君と同い年よ。

 ありあちゃん、

 この子はしゅう君。

 そこの進学校よ。」

「へー、すごいねー。」

「いや、すごくないよ。」

「あたしはあっち側の商業だよ。」

「そうなんだ。」

「ありあちゃんの、

 勉強に聞いて行ったら?」

「えー、先生、恥ずかしいよ。」

「いいじゃないの、

 修君はね、まだ、

 ドレミファソラシド覚えてる所なのよ。」

「もー。

 やだな。

 一曲だけ聞いたら帰ってね。

 そおっと。

 感想とか、

 いらないし、

 先生に怒られてるとこ見られたくないし。」

「うん。

 わかったよ。」