彼女の愛すべきドビュッシー

僕らは外の階段に腰かけた。

「寒くない?」

「いや、今すごい火照ってて、

 気持ちいいよ。」

「ならいいけど。」

「修君。」

「ん?」

「あたしね、

 ピアノがめちゃくちゃ

 コンプレックスだったの。

 うまく弾けなくて、

 どんどん落ちこぼれて、

 同い年の子たちは、

 音大目指してどんどん

 うまくなっていった。

 中学の時、

 合唱の伴奏を頼まれて、

 でもうまく弾けなくて、

 だから

 先生のとこに毎日通ってたら、

 部活を毎日抜けるから、

 先輩に呼び出されて、

 まじめにやれって。

 もお、

 いやだった。

 ピアノなんか弾きたくなかったよ。」

「そんなことあったんだ。」