彼女の愛すべきドビュッシー

それから、

彼女はソファーにやってきて、

ピアノを弾かずに、

一緒におしゃべりをした。

「なんかさ、

 時代背景とか、

 ドビュッシーについて調べたり、

 そしたらさ、

 あんまりいいこと書かれてないんだよね。」

「そうなの?」

「すくなくともウィキペディアには。」

「パソコンで調べたの?」

「うん。

 大体ね、

 あたしは歴史上の人物とか、

 歴史とか、

 全然信じてないからね。

 恐竜だって、

 勝手に人間が名前つけてるけど、

 本当は彼らにとっては、

 違う名前だったかもしれないし。

 だからいまいち勉強する気にはなれない。」

「ふーん。」

僕はただただ圧倒されていた。

そんな風に疑問を持って生きてはいない。