彼女の愛すべきドビュッシー

弾き終わってから、

恥ずかしいのか、

すぐこちらを向いて言った。

「このさ、」

前奏。

「この部分がめちゃ好き。

 いいよね。」

「うまかったよ。」

「ま、

 ドレミファソラシドレベルの人よりはね。」

「僕はほんと、

 右手と左手が連動しちゃって、

 全然前に進めないんだ。」

「へー、

 なんか小っちゃい時から習ってたから、

 連動した記憶ももうないよ。

 きっとあたしも、

 小さいときはそれでイライラとか

 したんだろうなー。」

「いつから習ってたの?」

「習ってたのは小学校から。

 でも、
 
 家にピアノがあったから、

 結構小さい時から弾いてたと思う。」

「そうなんだ。」

「てか、

 先生遅すぎるでしょ。

 何回か練習したら、

 もおかーえろ。」