とある王国の東の果てに、悪戯好きな魔女が住んでいました。魔女の名前はマグノリア。とても若く、それはそれは美しい姿の魔女でした。

ところが、マグノリアは悪名高き魔女でした。マグノリアの悪戯は、国中のたくさんの人々を困らせてきたのです。人々はマグノリアのことを嫌いました。恐れていました。けれど、マグノリアの美しさだけは人々を魅了していました。

やがて、若さと美貌に恵まれたマグノリアに嫉妬した北の大魔女イザベラは、マグノリアに呪いの果実を与えました。とても美味しそうな香りのする果実を、マグノリアは喜んでひと口かじりました。

すると、なんということでしょう――…

果実を口にしたとたんに、マグノリアは突然苦しみもがきはじめたのです。身体が焼けるように熱くなり、ミシミシと痛みが全身を駆け巡りました。頭がおかしくなりそうな吐き気に、マグノリアはとうとう倒れてしまいました。

次第にマグノリアの美しい黒髪は真っ赤に染まり、燃え盛る炎のようなたてがみとなりました。エメラルドグリーンにきらめく宝石のような瞳はギラギラとした金色に変わり、肉食者の眼光へと変わりました。そして、カナリアのように透き通る声はけたたましい雄叫びとなり、細かった指は鋭く尖った爪のある太い指へと、エキゾチックな褐色の肌はゴツゴツとした鱗へと変貌を遂げました。背には長い翼が生え、硬い尻尾が地面の土をえぐりました。

そうです。マグノリアは、イザベラの呪いによって恐ろしいドラゴンの姿へと変えられてしまったのです。

湖にうつしだされた自分の変わり果てた姿をみたマグノリアは、驚愕しました。そして天高々と悲しみの咆哮をあげ、イザベラから逃げ去るように雲の彼方へと飛んでいきました。

東の魔女マグノリアの居城には、高らかに笑う北の大魔女イザベラの笑い声だけがいつまでも響いていました。