不思議の国の河野くん


体育の授業が始まった



「美穂、さっきの時間どこいたの?」


「図書室で本読んでた」


「そうなんだ」



今日の女子の体育は自由だった。


男子も自由みたいで、クラスでチームを作ってバスケをするみたいだ。




相変わらず、鹿の被り物の河野くんはういていた。






「キャーッ!!」



思いのほか、河野くんは運動神経抜群だった。



「鹿ちょうかっこいー」



しかし鹿。




ふーっと汗をふくつもりか、鹿の額を腕でふいていたが

たぶん意味ない





あまりにそのバスケ中の河野くんがカッコいいので



女子は釘付け


さっきまで変身ベルトどやこや言ってたことを忘れていた





河野くんが、ゴールをかっこよく決めた時

鹿の被り物がとれそうだったので急いで被りなおしていた



その姿は何となく少し笑えた




「ねえ、鹿って被り物で何か隠してない?」

「わかる。実はめちゃくちゃ不細工だから隠してイケメンぶってんじゃね?」



隣の人の会話がかすかに聞こえたような気がした




その瞬間、河野くんにボールをとろうとした人とディフェンスしていた人が河野くんにぶつかり



河野くんは足をくじいてしまったのか、動けなくなっていた。




全員がわっとなって、急いでディフェンスだった人は保健室へ河野くんを連れて行った



「寝てる時にこっそり剥がそうよ」



隣の女子生徒は何か言ってどこかへ行ってしまった。




のちにディフェンスの人は帰ってきて、みんなに


河野は足をくじいただけで、ほっとけば治るからって言っていたと伝えた。



一安心。



だけど、なぜかさっきの女子が気にさわった



何か起こりそうな予感がした。






急いで保健室へ走った




保健室沿いの廊下を走っていると

キャーッといういかにも黄色い声。


何か叫ぶ声。さっきの女子だ。




急いで向かうと、ベットを起き上がって女子を吃驚した目でみる河野くん。



携帯片手に顔を真っ赤にする女子生徒2人




「なん…何で取ったんだ」



「気になっちゃってさー。つかマジイケメン!!」




「みんなに自慢しよー」




「いや、みんなには言うな」