色々突っ込みたいが…
「河野くんもなかなかファンタジーなものをかりてるのね」
「お前も読むといい」
「遠慮するわ」
黙々と本を読み進める河野くん。
鹿からはちゃんと文字が見えるのだろうか。
「見えにくくないの?」
「まあ確かに、穴が小さいから視界はせまいが…」
というか、最初に会ったときからの疑問があった
「なんで鹿の被り物なんてしてるの?」
そう、これが聞きたかった。
少し沈黙が続いた
「俺は自由に生きていたい」
十分すぎるぐらいに自由だとは思うが、
その言葉はどこか意味深に思えた
それ以上は聞いてはいけない気がしたから、黙っていた
河野くんは黙って被り物を取った。
やっぱり、綺麗な顔立ちだ。
「お前はあまり叫ばないんだな」
「心の中で叫んでるもの」
「福くんって何か変わってるな」
「河野くんにだけは言われたくはないわ。だから福くんじゃないよ」
「お互い様だ。ぶぁーか」
「何よ、宇宙人、ぶぁーか」
河野くんは相変わらず変わらない真顔でこっちを見ていたが
プッと笑う声がした
耳を疑って目をかっぴらいたら
少し顔を崩して笑う河野くんがいた。
なんだか急に、河野くんに愛嬌がわいた
笑うんだな。

