星矢の言ったこは本当だった。後日、いつものクレーマーの家に呼ばれた。しかし、玄関を開けた瞬間に謝られた。そのクレーマー曰く、早紀の指がとても綺麗で、モデルをやって欲しいということだった。指をあらゆる角度から確認する為に、クレームのフリをしたらしい。指モデルは専属という雇用であり、その元クレーマーはネイル雑誌の社長だった。
 ふと、あの紙ヒコーキの文面が早紀の頭をよぎった。
『あなたを必要としてくれる人がいます。それに、下ばかり向いていたら虹は見えません』
 早紀は一度深呼吸し、一歩前へ踏み出してみようと思った。
 雨上がりの空には、虹が架かっていた。