「保護・・・・・・」

 ぼんやりとその人影を眺めながら、カイは実感なく呟いた。

 彼からすれば、レイアは保護すべき対象ではなかった。

 人の姿を見ているせいかもしれない。

「オレはまあ、彼女のこと知ってるから、そんなこと考えないけど・・・・・・研究所内では、けっこう具体的に話が進んでるみたいだぞ」

「無理だよ。彼女を捕まえるなんて。罠にかからない」

「う・・・・・・ん、そうなんだろうけど・・・・・・」

 ドゥリーは心の中で、心配なんだよ、と呟いた。

 彼が考える限り、レイアを捕まえる方法は割とすぐ思いつくのだ。

 当の本人は、ずいぶんのん気に構えているようだが。

「ま、・・・・・・いいか。そういえば、お前、最近ずっと家に帰ってないだろ」

「? ああ・・・・・・そうだな」

 言われてみると、イルカ姿のレイアと海で会ってから、カイは一度も自宅に帰ってはいなかった。

 研究で手が離せない時などもあり、研究所に泊り込むことも良くあったカイは、帰宅していないことなど大して気にしていなかった。研究所には、宿泊設備も完備されていたし、不自由はない。

「つまり、レイアと毎晩話してるんだろ? ・・・それで、どーして何も訊けてないんだよ」

 ドゥリーの指しているのが、レイアと月の間で交わされた契約についてだと分かると、カイは表情を曇らせた。

 毎晩、会って話をしているといっても、本当に大した話はしていないのだ。

 レイアから見た、海の話や、カイの研究内容についてが主な話題だ。肝心なことは、結局、聞けないままでいた。