――10日後には、レイアの存在は研究所の大きな話題になっていた。

 昼間のほとんどの時間を、レイアは研究所近くの浅瀬で過ごすようになっていたから、噂になるのも当然だった。

 最近では、どこから広まったのか、研究所に関係のない人々まで見物に訪れるようになっていた。

「・・・・・・レイア、大丈夫かな?」

 カイ専用の研究室へ入ってくるなり、ドゥリーが口にしたのはそれだった。狭い部屋なので、二人いると少し窮屈に感じる。

 カイは顕微鏡をのぞく手を止め、ドゥリーを振り仰いだ。

「何が?」

「・・・何がって、」

 あいかわらず所内の噂に疎いカイの様子に、ドゥリーはあきれた様にため息をつく。

「本当に何も耳に入ってないのか?」

「何も」

「まったく・・・・・・レイアは絶滅したはずのイルカなんだぞ。普通に考えたら、保護すべきだろ? そういう話」

 言いながら、ドゥリーは顎で軽く窓の外を指した。

 窓の向こうに広がる海岸では、イルカを一目見ようという人だかりが出来ている。

 一般人に混ざって、白衣姿の研究員も数人見えた。