きみに会える場所~空の上ホテル~

「うおおおおい」

すぐ近くから声が聞こえた。私は猛禽類みたいに目をきょときょとさせて声の主を探した。

「東条茂人さーん」

「うおおおおおい」

「東条茂人さーん」

「うおおおおおい」

こんなやりとりを繰り返しながら、道を外れ、街路樹を抜け、芝生の上まで来た。

もう空と雲しかないんですけど。

「東条茂人さん、どこですかー?」

「ここじゃー」

私は芝生の縁まで歩いて行った。手のひらにじっとりと汗をかいた。下からの風でスカートがはためいた。すぐ十センチ先に何もないっていうのは、すごく奇妙な気分。こわいような、ふわふわしたような感覚。

「うおおおおい。ここじゃー」

下から声がした。ぎりぎりのところに立ってのぞくと、丸い眼鏡をかけたおじいさんの顔が見えた。白髪の坊主頭。丸い眼鏡。間違いない、東条茂人さんだ。でも・・・・・・

何でそんなとこに?!