きみに会える場所~空の上ホテル~

コカナタくんは目をうるうるさせた。

私は即座に言った。
「そんなことないよ。ごめんね、誤解させるようなこと言って」

「ほんとに?」

「うん、ほんと。よろしくね、コカナタくん」

コカナタくんと私は見つめ合うとにこっと笑った。

かわいらしい道連れができてよかったなあ。一人で行くの、本当はちょっと不安だったんだ。

「美緒ちゃん、これも持っていきなよ」

カナタさんがみかんを枝からもぎとって渡してくれた。

「ありがとうございます」

「じゃあ、コカナタくんは移動だな」

カナタさんはコカナタくんのシャツをひょいとつまむと、私の左肩にちょこんと置いた。

「お客様がやってくる道筋はコカナタくんが知ってるから」

コカナタくんも大きくうなずいた。

むむ。首を曲げても、近すぎてコカナタくんがよく見えない。

裏門までカナタさんが送ってくれた。

「それじゃあ美緒ちゃん、気をつけて行くんだよ。行方不明のお客様のことも頼んだよ」

「はい」

私は深呼吸した。いよいよ外に出るんだと思うと、足が少し震えた。外は一体どんなところなんだろう。

カナタさんは私をいつものいたずらっぽい目で見つめていた。

「安全祈願にキスでもしとく?」

「遠慮します」

「うわ。さらっと返された。しかも顔色も変えずに」

「何度もやってれば慣れます」

「ちぇ。つまんないの」

カナタさんはちょっとむくれた。私は思わずふふっと笑った。足の震えがおさまった。

「じゃ、行ってきます」

私はカナタさんに見送られてホテルの外に出た。