きみに会える場所~空の上ホテル~

「やあ、美緒ちゃん」

あれ? この声。それにこの顔。

「おれの分身、コカナタくんです」

「コカナタです」

ちっちゃ。っていうか、かわいい。カナタさんはいかにも大人の男の人だけど、コカナタくんは、カナタさんを小学生にしたみたいな感じだった。

小学生にしては声低いけど。

「コカナタくんが、おれに代わって美緒ちゃんの道案内をします」

「します」

「おれともども、どうかよろしくね」

「よろしくね」

面白ーい。同じ声が別々のところから聞こえる。

「ほんとはおれが行ければいいんだけど、おれも一応ホテルマンなんで仕事中なのよ」

「はあ、仕事中、ですか」

「あれ? 疑ってる? おれ、今たまたま休み時間だったのよ」

カナタさんはしれっとした調子で続けた。

「いい感じで眠りの世界に入っていこうとしたら、何かが突然おれの胸に飛び込んできたわけ」

はあーと大きくため息をつくと、こっちをちらりと見た。

「ご、ごめんなさい」

私は頭を下げた。

悪いことしたなあ。寝入りばなを起こされるのって、すごくつらいよね。よくわかるよ。

「まあいいけどね。気持ちよかったし」

「何がですか?」

カナタさんはにやりと笑った。

「感触が」

「!」

かああと顔が火照った。

……絶対、からかって楽しんでる。子供だと思って。大体、気持ちいい感触のはずないんだもの。

手の中のコカナタくんがちょいちょいと指をつついた。

「僕じゃ頼りない?」