きみに会える場所~空の上ホテル~

カナタさんから戻してもらったパンフレットを見つめて、私は途方にくれた。

どうしよう。地図が使えないのに、どうやって東条茂人さんのいるところまで行けばいいんだろう。

カナタさんはしばらく腕組みをして空を見上げていたが、やがてきっぱりと言った。

「仕方ない。とっておきの切り札を出すか」

「とっておきの切り札?!」

「美緒ちゃん、手を出して。水をすくって飲む時みたいに」

「? ・・・・・・こうですか?」

私はパンフレットをしまうと、あわてて両手を出した。

カナタさんはやわらかそうな髪の毛に手をふれると、ぐいっと引っ張った。

ぷちっと音がした。い、イタそう。

カナタさんはしかめ面をしてあいている方の手で頭皮をさすった。

もう一方の手には茶色い髪の毛が一本。

指ではさんだ髪の毛にふうっと息を吹きかけると、何かぶつぶつつぶやいた。

それから、髪の毛を私の手の中に落とした。

「何ですか、これ? 何かのおまじない?」

私は息をひそめて手のひらの茶色い毛を見つめた。鼻息を荒くしたら飛んじゃいそうな髪の毛だ。

ぴょこ。

髪の毛が動いた。

「え?」

ぴょこぴょこぴょこ。

また動いた。

「えーーー?」

髪の毛はリズムをとりながらどんどんふくらんだ。茶色い丸い物体が手のひらから飛び出しそうになった時、ポーンと破裂した。

と思うと、手の中にちっちゃな人が立っていた。